9月 25 2013
私のインターン体験記 (大学生による職場体験)
早いもので、9月もまもなく終わります。
今年の夏は特別暑かったです。
その暑い中で、雀おどりでの3週間のインターンシップに挑戦した大学3年生から、
熱い就業体験レポートが届けられました。
かなり長文ですが、
嬉しくて全文掲載しますので、お時間のあるときにでもお読みくださいませ。w
【自己紹介】
私は「雀おどり總本店」で夏休みを利用して約2週間働かせていただいた、現在大学三年生のインターン生です。12月からの本格的な就活に向け様々なことを学び取っていけたらと思い、このインターンに参加しました。雀おどりの社員さんたちと働き、私が実際に感じ取ってきたことを形に残したいと思い、体験記にまとめました。
雀おどりさんの商品がお客さんに届くまでにどんな工程があるのか?どんな人たちと出会ってきたのか、実際その作業に参加してみてどんなふうに感じたか、伝えられればと思います。
そして、自分の仕事観・人生観を見つめなおすとともに、学生という立場からの発見や意見を述べてゆきます。
【今までの私】
私はこのインターンに参加する前は、クレジットカードの開拓のアルバイトや大学の進路相談のアルバイトなどを経験しただけで、 お菓子屋さんはもちろん飲食店や工場で働いた経験はありませんでした。「物語」に興味があり、大学では近現代の小説を読み説いたり、演劇を見に行ったり、物語構造を分析したり、実際に小説を書いて批評し合ったり、大好きなマンガを描いてみたり…と、好きなものにひたすら没頭していられる生活を送っていました。
和菓子とは無縁の生活を送っている私が、なぜインターン先の候補に雀おどりさんを挙げたかというと、単純に「甘いものが好きだから」という理由からでした。もちろん、他にも印刷会社やデザイン会社など、私が大学で興味を持っていた「表現する」ことに関連する企業もいくつか候補にいれていました。
しかし、最終的にはカウンセラーの方の判断によって行き先が決定されるため、私自身はどの企業に決まったにせよ、参加した以上はこの体験から自分で学びとっていく努力をしようと思っていました。
【本店と私】
雀おどりさんの勤務地は繁華街の栄にある本店と清須市の工場の二か所です。約二週間のインターン期間のほとんどはお店で勤務していました。和菓子と喫茶のあるお店の仕事は厨房(調理・皿洗いなど)と接客が主な仕事内容ですが、それも大きく分けて二つの分野があります。ひとつは、店頭で和菓子を買っていくお客さまへの接客。もうひとつは、店内でお召し上がりになるお客さまへの接客と、注文に応じた調理です。
店頭での接客では商品を買っていく方に対応するのはもちろんのこと、雀おどり独自のおもてなしとして、「サービス」と呼ばれる一口大のういろうと冷たいお茶をお出しします。暑い中雀おどりさんに足を運んで下さったお客さまに対する細やかな気配り。
実際お出ししてみると、初めて来たと言う方は驚きながらもすごく喜んで下さったし、常連のお客さまの中には「サービス」目当てで訪れる人もいました。そういう何気ないところで、雀おどりさんの印象がお客さまにも伝わっていくんだなあと実感しました。
販売している和菓子は全て工場で作られてきたものをショーケースに並べてあるので、本店でういろを作る、ということはありません。厨房で調理されるのは、定食やかき氷など、お客さまが注文したものに限られます。
私は席へのご案内やご注文をうかがったり、伝票を書いたり、ご注文の品をお盆で運んだりと、「飲食店の接客」らしい仕事が主でしたが、私にとってどれも初めてのことばかりで、とても大変でした。初日・二日目は特に酷く、注文品を運ぶ席番号を間違えてしまったり、伝票を書き間違えたり、かき氷のお盆が重くて二つ同時に運べなかったり…本当に、社員さん、アルバイトさんたちにはご迷惑をおかけしたと思います(汗)
文章にすると役割に分けて説明していますが、実際働いてみると、状況によって役割も入れ替わっていきます。例えば、お客さんが入り忙しい時間帯になり、流し台に洗いものが溜まってきたようであれば、誰かがそれを片づけなければならない。お客さんをお待たせしているようであれば、注文を窺いながらもお帰りになるお客さんに目を配り、空いた席をすぐに用意する。状況に応じてはそれまでしていた作業を中断し、助け合いながら仕事を分担していく…。
「臨機応変」という言葉の意味を身を持って知ることになりました。
【試食販売と私】
雀おどりさんでは、名古屋駅や空港など直営店舗以外でもういろを売っています。
名古屋駅にあるキヨスクの前で二日間にわたって試食販売があり、せっかくなので私も参加させていただきました。
仕事内容は、雀おどりの羽織を着て、ういろの乗ったお盆を持ちながらお客さんを呼び込むこと。私が以前クレジットカードの開拓のアルバイトをしていたときも、同じようにしたものでした。食べ物なので人も呼び込みやすいかなと思っていましたが、場所の問題か旅行客が少なく、反応してくれる人も思ったより少なかったです。でも、子供たちはういろに興味津津という感じで、率先して寄ってきてくれました。中には、ういろを初めて食べたという子もいて、「ようかんと全然違う!」と驚いていたのが印象的でした。また、仕事の合間をぬって他のキヨスクの様子を見に行ったとき、今まさに「雀おどり」の一口ういろを買っていこうとするサラリーマンの姿を目にし、ひそかに嬉しくなったのも覚えています。
こうして店の外に出てみると、店の中で接客していた時とはまた違った視点からお客さんの様子を見ることができるように思います。自分の知らないところで、自分が売っている商品を買っていく人がいる。直接的な繋がりはないけれど、なんだか心があったかくなるようでした。
【工場と私】
工場の朝はとても早く、朝6時から仕事が始まります。名古屋の自宅から清須工場まで距離があるので、私は7時からの参加になりましたが、それでも通うのは大変でした。
工場に着くと、まず白衣をはおり、毛髪が出ないように帽子もかぶります。着替えを済ませた後は作業場に入る前に手をしっかり洗い、いよいよ仕事が始まります。何十キロもある砂糖の袋の中から決まった量だけを測って取り出したり、一口ういろの栗抹茶の栗を詰めたり、パートさんが出勤してからは一緒にういろの箱詰め作業を手伝ったり…。単純な作業のはずなのに、いざ自分でやってみると、袋の口にうまくういろが入らなかったり、ういろの乗った網棚が想像以上に重くて腰が痛くなったりと、ひとつひとつの作業をするのにも時間がかかって苦戦しました。
作業自体の大変さも痛感することながら、私が工場に来て一番驚いたのは、社員さん、パートさん同士のスキンシップの機会を設けているということでした。例えば朝礼では、今日の連絡事項などを確認した後、皆で軽く体操し、全員一列になって肩をもみ合う「肩揉み朝礼」という、おもしろい習慣がありました。また、仕事を始めてから一時間ごとに、パートさん二人がコロコロローラーを持って待ち構え、他の社員さんやパートさんたちの白衣をコロコロできれいにしてあげる「コロコロタイム」(私が勝手にそう呼んでいるだけですが)なるものがありました。
古橋社長から見せていただいた資料によると、「肩揉み朝礼」については、社員同士のコミュニケーションを円滑にするために取り入れた決まりごとだそうで、やはりスキンシップがあるのとないのとでは会社の雰囲気も変わってくるといいます。古橋社長いわく、「触っているうちに相手のことを好きになっていく」んだとか。確かに、私も実際パートさんたちに混じって肩揉み朝礼に参加したとき、照れくさいけれど「雀おどり」さんの一員になれたようで、なんだかうれしく思いました。社員同士のコミュニケーションが会社の印象を作っていく…。皆さんの働く笑顔を見ていて、そんな風に思いました。
【働き手の皆さんと私】
雀おどりで働いているのは、社員さん以外にも、パートさんやアルバイトさんがいて、私も混じって作業をしたり、仕事の手順を教わったりしていました。
私は仕事の合間をぬっては色々な人にインタビューしたり、雑談を通して「仕事観」や「人生観」について触れることができました。同じ会社で働いていても、仕事に対する思いや価値観は人それぞれ。当たり前のことですが、実際にお話をうかがうことで、働き手の皆さんの生きざまが見えてくるようでした。
しかし、それぞれの価値観がまるっきり違うというわけでもありません。私がお話をうかがったのは全部で7人でしたが、大きく共通していた点があります。それは家族のため、大切な人のために働いている人が多いということです。インタビューの中で、「これから人生を生きていくうえで大切だと思うことを、健康、お金、家族、仕事、趣味、平和、学習の七つの項目から順位付けするとしたら、どんな順位をつけますか?」という質問をしてみたところ、「家族」や「平和」、「健康」が圧倒的に高い順位を占めていました。もちろん10人に聞けば10通りの考え方があるのだし、それぞれの質問の解釈も人によって様々です。既婚者かそうでないか、お子さんがいらっしゃるかそうでないかによっても心境に変化が出てくるでしょう。けれども、「趣味」や「学習」といった個人的な欲求よりも、「自分以外の誰かのため、自分をとりまく環境を守っていくことが大切だ」と感じている人が多いことに私は少なからず驚きました。
実はこのインタビューは、働く前の事前研修のときに、インターン生同士でも語り合った話題だったのですが、そのときの結果も個人差はありましたが、総合的に見て「家族」はそれほど高い順位を占めていませんでした。逆に、自分が生きていける程度の「健康」や「平和」はインターン生にとっての高い順位を占めていました。
これらの結果を比べてみると、やはり、働くことや自分の家族を持つことによって、その段階での大切なものというのも徐々に変化していくのかな、と思います。私自身は、今は自分の就活のこと、大学のこと、自分の趣味ややりたいことで頭が一杯ですが、また起こるであろう心境の変化に合わせて、ときどきは自分自身を見つめなおす機会を作ることも大切なのかもしれないと思いました。
【お客さまと私】
本店勤務と試食販売のときは、お客さまが食べている所や商品が買われていくところなどを目の当たりにしました。工場勤務をしてからは、「もしかしたら自分が栗を詰めたういろかもしれない」と思うようになり、今まで以上に「雀おどり」で働いているということを意識するようになりました。
本店でお客さまの様子を見ていると、本当に色々な人が訪れるのが分かります。中には常連さんもいて、厨房に顔を出して挨拶するおばあさんや、ここに来ると子供に鯉の餌をやらせているという4人家族、一人で来ているけれどメニューを見ずとも鮭茶漬けを注文する女性客などがいました。初めてきたという方も、サービスのういろに喜んでいたり、かき氷のボリュームに驚いていたり。ジム帰りにたまたま寄ったというおじさん二人組は、本当に良い笑顔でかき氷を食べていて、見ているこちらも嬉しくなってくるほどでした。
見回してみると、「雀おどり」は本当に様々な人に支えられて成り立っているんだなと感じます。馴染みのお客さまとの繋がりであったり、初めて来たというお客さまとの新しい出会いであったり。また、事情やここに辿りつくまでの経緯は違うけれど、今は一緒に働く仲間であったり。生まれや育ち、価値観もそれぞれに違う人々が、お店を通して繋がっているという現実。人が出会えばそこで物語が生まれる。嬉しいこともあれば苦しいことだってある。全ての出会いが良いことばかりだったわけではないけれど、「今」の「雀おどり」があるのは、そんな人々との繋がりが確かにあったから。同じように汗水垂らして働いて、私もその内の一人として大きな縁(えにし)の円に加わっているんだと実感しました。
【老舗店と私】
雀おどりさんの代名詞でもある「老舗店」。長く愛され、「老舗」であるためには土地や店自体の「強み」を知る必要があった、という話を古橋社長から聞きました。雀おどりさんの場合は、地元・名古屋の名産品であるういろうに注目し、それを「強み」として商売を行ってきた。自分を知り、今ある「強み」を伸ばしていくこと…インターン中の私にとっても胸にくる言葉でした。
インターン中、同じ失敗を繰り返して自己嫌悪に陥ることも多かった私。なんで繰り返してしまうのか、なんで自分は他の人と同じようにできないのか、失敗するたびに悩んで苦しくなりました。経験の差があるのだから初めからうまくできる方が稀ですし、初めての体験なのだからできなくて当たり前。二週間そこそこ働いたところで、長年働いてきた社員さんたちの技術と比べるのもおこがましいというものです。けれど仕事をしていかなければならない。失敗しても、自分にできないことを悔やんでも、その範囲の中でやっていくしかない。自分を知り、今ある「強み」を伸ばしていくこと…。古橋さんの「老舗店」の捉え方を通して、「自分」という範囲の中でできることを見つけて成長していくしかないんだ、と痛感しました。
こう書いてしまうと、なんだか自分にできることなんてちっぽけで、自分には何の価値も見いだせないように思えてくるかもしれません。事実、人間一人にできることよりも、できないことの方が圧倒的に多いでしょう。けれど、「できないからやらない」ということと「できることをやる」ことでは、似ているようで結果が異なってくると思うのです。自分にできることなんて少なすぎる、だから「できないからやらない」。その考えで止まってしまえば、できないと判断したことは全てやらないまま終わります。けれども、「できることをやる」というのは、やってみて「できない」としても、「じゃあ次にできることって何だろう?」と他に目を向けることができます。思考は止まらず、次の段階へと進むことができます。
小難しいことを言っているように思えますが、要は言葉を捉える人の気持ちの問題だと思うのです。言葉の捉え方によって、人の行動は簡単に影響されます。私はどちらかというと物事をネガティブに考えてしまいがちな性分なので(汗)、できないと思ったことはずるずる引きずってしまいがちです。けれどそこで止まっていては、当たり前ですが前には進めません。できないことを認識したうえで、自分のできること、「強み」に目を向けていき、なおかつ、それを伸ばしていくための努力をしていく必要があるんだと感じました
(実行するのはなかなか難しいですが…)。
【これからの私】
私はインターンを通して様々なことを学ぶことができました。社会人としての常識の問題であったり、知らなかった癖や欠点であったり。あるいはこのインターン中に出会った人々の生き方を通して見つめなおした自分自身の生き方であったり。目に見えず、形にすることもできないけれど、それらの経験は確かに私の中で息づいています。
これから先、私がどんな職につき、どんなことが待ち受けているのか、私自身まだ分かりません。時には判断を誤ることもあるし感情に流されて失敗することもあるでしょう。このインターンだけでも、私は色々な人に迷惑をかけたし、沢山の失敗を犯しました。私が学びとってきたことが、全ての人に受け入れられるかと言えばそうではないし、必ずしもこれらの体験が良い変化に繋がっているのかはわかりません。けれど、今の私を作ってくれた色々な人や出来事のためにも、これから社会に出たとき、すこしずつ恩返ししていけるような人生を歩んでいきたいと感じました。
【あとがき】
最後に、お世話になった「雀おどり」の皆さんに感謝の意を。古橋社長、社員さん、パートさん、アルバイトの皆さん。短い間でしたが、いろいろと良くして下さって本当にありがとうございました!